役立たず姫の一生〜永遠の誓いを貴女に〜
エレーナが来てからというもの、俺の生活はすっかり様変わりした。

以前のように自由気ままに過ごすことは叶わず、エレーナに振り回される日々。


王宮育ちのエレーナはこの田舎暮らしにさそがし苦労するだろうと俺は思っていたんだけど、全くの思い違いだった。

彼女はすんなりとティーザ城での生活に馴染み、侯爵夫人であるサラとは本物の母娘のように一緒にお菓子作りなどをしている。


中でも、エレーナの行動で最も参ったのが・・・


「さぁ、アゼル。 今日も剣の稽古に付きあってちょうだい」


エレーナは毎日、剣の稽古を欠かさない。 何故、王女殿下が剣を振り回さなきゃいけないのかはさっぱりわからないが、エレーナの剣の腕はなかなかのものだった。

エレーナはナイフより少し大きいくらいの短剣を愛用していた。
長剣に比べれば女性でも扱いやすく、実用的だ。

俺は間合いを詰められないよう注意しつつ、彼女の剣を振り払うようにしてその攻撃をかわす。


「住んでいた離宮の護衛をしていた男に習ったのよ。 良い運動になるし、いざというときの護身にもなるしね」

おそらく、その護衛官はかなりの遣い手で良い師であったのだろう。
エレーナの剣は重さはないが、スピードがある。 ふと気がついた時には懐近くまで入り込まれていて、驚くことがあった。

「そんな男に護衛されていたのなら、護身術なんて必要ないじゃないですか」

「あら、それはわからないわよ。
現に私は王宮を出されてしまって、もう護衛官はついていないもの。

それとも、アゼルが守ってくれる?」

剣を構えたエレーナの澄んだ栗色の瞳が俺を見上げた。
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