海 に 溶 け る 。
あまりにも白く繊細な顔立ちをしたその男にしばらく見とれていたら
「いいよ。どこにいく?」
と、再度訊ねてきた。
あたしはハッとして、慌てて声を出した。
「どこでもいい。遠くにいきたいの」
「遠くねぇ…」
真剣な顔をして悩んでいるすきにも、あたしはその男を盗み見ていた。
なんだか、この世の者とは思えないほどの透明さを感じる。
こいつも、ラブホにいくのだろうか。
「あ、いいところがあった。連れてってあげるよ」
そう言って楽しそうに笑い、黒い髪を柔らかな風になびかせながら、あたしの手を取り走り出した。