海 に 溶 け る 。
楽しそうに笑いあいながら横切っていく女子高生の群。
なんでもないのにキラキラしている。
三ヶ月前まではあたしもあんな風に笑っていたんだ。
乱雑に並んだ机。
陽のあたる窓際の席。
そこから見える校庭。
だれもいない保健室。
黒板に書く白いチョークの音。
あの世界にあたしはもう戻れない。
雑踏にもまれて、消えていく。
あたしだけが、この世界から剥がれていく気がした。
『大丈夫だよ。俺は未央のこと、愛してるから』
やめてよ。
触らないでよ。
思い出させないで。
世界がグニャリと歪んで、あたしはその場にしゃがみ込んだ。
気にもとめずに通り過ぎていく人混みに埋もれながら。
青い空に押し潰される。