話をしよう。
珈琲一杯分の
「ちょっと話さない?」
そう言ったのは、2つ下の弟、啓太だった。
話したのは久しく前だった気がする。私が就職と同時に実家をでてから、2年後に啓太も家を出て、以来私が実家に顔を出しても、啓太と会うことはほとんどなかった。
今夜は、久しぶりの家族全員の食卓で、喜んだお父さんはお酒を飲み過ぎて、お母さんに支えられながら、寝室へいった。
「そうだね」
と一言返せば、啓太は軽く頷いて、冷蔵庫へ向かった。
「何か飲む?」
「んー、じゃあ珈琲、お願い」
「わかった」
そう言って、少し経つとマグカップを両手にひとつずつ持って、リビングに戻ってきた。そして、薄いピンクのカップを私にそっと渡してくれる。
「ありがとう」
すると"ん"と短く返す啓太の持つ、薄い緑のカップからそっと見えたのは、私と同じ珈琲だった。
「...珈琲...飲めるようになったの?」
「まぁね」
そう言って、ソファに腰掛けると、啓太はカップに口をつけた。
「前は苦いって、飲めなかったのに」
「...いつの話だよ、今じゃ毎日飲んでるよ」
そう言って、啓太はクスクスと笑った。
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