話をしよう。
「俺はずっと、一度だって
姉だなんて思ってなかった。」
「...啓太」
「......ずっと、妹みたいだと思ってた」
「...妹?」
私がそう言えば、啓太はクスクスと意地悪く笑った。
「そう、世話の焼ける妹。」
「....ひどい」
「...酷いのは、そっち」
「え?」
「...まぁ、いいよ
俺の役目も、終わりだし」
そう啓太はどこか、何か吹っ切ったように静かに微笑んだ。
__高校生の時、初めて彼氏を家に連れてきた日の夜、ソファで仰向けに寝ていた私に、啓太がそっとキスしたこと。私がそれに酷く鼓動を速めたことも。遅くに帰った啓太から匂った女物の香水に、私が密かな嫉妬を抱いたことも。全部、全部、知らなくていいい。啓太は何も知らないままでいてくれたらいい。
私は夫となる素敵な人と出逢えて、これから歩んでいく。啓太も素敵な人と出逢って、結ばれて、幸せになってくれたらいい。