話をしよう。



「幸せになれよ」

ついに私は泣いてしまった。"ありがとう"と何度も言いながら、顔をクシャクシャにして、鼻水垂らして、声を上げてたくさん泣いた。

そんな私を"何、泣いてんだよ"なんて文句を言いながらも背中を擦ってくれて、"ひどい顔"なんてまた言いながら、それでも自分の服の袖で、私の顔を拭ってくれる。啓太はそんな、優しい弟だ。


「...啓太も成長したんだね」

私が泣き笑いで、よしよしと頭を撫でれば

「うっせぇ、触るなバカ姉貴」

そう言って、泣きそうな顔で笑う啓太の顔は。遠い昔、姉弟になったばかりの頃。二人で迷子になって、不安で泣いてしまった私に、自分もきっと不安で泣きたいくせに、それでも"僕がついてるよ"と私に向けた、あの笑顔と同じだった。





*end*
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