青の哀しみ
プロローグ
「どこに行くの?」
「散歩」
玄関で靴を履こうとした私の耳に、彼のぶっきらぼうな声が響いた。
「オレも行こうか」
必ずそう言う彼に、私はいつもと同じ返事をした。
「いいよ、仕事あるんでしょ。それに一人のほうがいいから」
そう答えると、彼はそれ以上何も言わなかった。
答えられる返事を知っていて、それでもいつも同じ事を聞いてくる彼にも、いつも同じ返事を返す私自身にも、いい加減にうんざりしてくる。
だけど今日も同じ台詞を繰り返してしまったと思って苦笑いをした。
それでもここに来てから毎朝繰り返される日常を、どこか愛しいと思う自分がいるのも事実だ。
このとき、彼の顔を見ることはしない。
初めにこの会話をしたときに、彼の目が寂しそうだったのがわかってしまって、それ以来見ることはしないと決めたのだ。
彼を無視するように散歩用のリードを持つと、それを見たキノが大喜びではしゃぎ始めた。
「ほら、大人しくしなさい」
キノは朝私が起きてから、ずっとそわそわをしていた。
頭のいいキノは、ここに来て一週間もしたら毎朝の日課をすぐに覚えてしまい、私が起きるのと同時に、今か今かと散歩のスタンバイを始めてしまっているのだった。
私が玄関に来ると、キノもすたっと立ち上がった着いてきて、座ってじっと私の顔を見ていた。
そんなキノがかわいくて仕方がなく、朝ごはんを食べるまもなく散歩に連れいてってしまう私は、キノの召使と言ってもいいくらいだ。
「じゃあ行って来るね」
「あぁ、行ってらっしゃい」
相変わらず彼の目を見ずに言った。
帰ってくる頃には、もう彼は仕事に行っていない。
朝交わす会話はこれくらいだったが、それでも何か言うことも無い。
ましてや行ってきますのキスなどあるわけもない。
私たちは恋人でも、ましてや友人でもない。
肉体のつながりも、心のつながりも無い二週間前に出会ったばかりの他人だったからだ。
「散歩」
玄関で靴を履こうとした私の耳に、彼のぶっきらぼうな声が響いた。
「オレも行こうか」
必ずそう言う彼に、私はいつもと同じ返事をした。
「いいよ、仕事あるんでしょ。それに一人のほうがいいから」
そう答えると、彼はそれ以上何も言わなかった。
答えられる返事を知っていて、それでもいつも同じ事を聞いてくる彼にも、いつも同じ返事を返す私自身にも、いい加減にうんざりしてくる。
だけど今日も同じ台詞を繰り返してしまったと思って苦笑いをした。
それでもここに来てから毎朝繰り返される日常を、どこか愛しいと思う自分がいるのも事実だ。
このとき、彼の顔を見ることはしない。
初めにこの会話をしたときに、彼の目が寂しそうだったのがわかってしまって、それ以来見ることはしないと決めたのだ。
彼を無視するように散歩用のリードを持つと、それを見たキノが大喜びではしゃぎ始めた。
「ほら、大人しくしなさい」
キノは朝私が起きてから、ずっとそわそわをしていた。
頭のいいキノは、ここに来て一週間もしたら毎朝の日課をすぐに覚えてしまい、私が起きるのと同時に、今か今かと散歩のスタンバイを始めてしまっているのだった。
私が玄関に来ると、キノもすたっと立ち上がった着いてきて、座ってじっと私の顔を見ていた。
そんなキノがかわいくて仕方がなく、朝ごはんを食べるまもなく散歩に連れいてってしまう私は、キノの召使と言ってもいいくらいだ。
「じゃあ行って来るね」
「あぁ、行ってらっしゃい」
相変わらず彼の目を見ずに言った。
帰ってくる頃には、もう彼は仕事に行っていない。
朝交わす会話はこれくらいだったが、それでも何か言うことも無い。
ましてや行ってきますのキスなどあるわけもない。
私たちは恋人でも、ましてや友人でもない。
肉体のつながりも、心のつながりも無い二週間前に出会ったばかりの他人だったからだ。