青の哀しみ
八広浩太
鍵を開けて玄関を見ると、汚れたスニーカーが一足あった。
あれ、まだいるんだ。
私は穴の開きかけたコンバースの靴を脱ぎながらそう思った。
キノの足を拭いて家の中に入ると、八広さんがソファにだらりと座って新聞を読んでいた。
寝癖のついた髪を直さずに、眠たそうな目をしている。
台所を覗くと、きちんと皿が洗われていた。
それを見て私は苦笑いをした。
「私が洗ったのに」
「いや、暇だったから」
「仕事、いかなくていいの?」
「今日、日曜……」
「そっか。曜日の感覚がなくなるんだよねぇ」
独り言のように呟くと、手を洗ってパンをトースターに投げ入れた。
しばらくすると、チンッと甲高い音が聞こえたので、パンを出してマーガリンを出した。
八広さんはそれを横目でちらりと見た。
「食べる?」
「いや、いいよ。パンと目玉焼き食べたから」
「そう。でも八枚切りで足りたの?」
「うん。ヨーグルトも用意してくれてただろ。お陰でお腹いっぱいだよ」
八広さんは小食だった。朝だけではなく、夜もあまり食べない。
私よりも食べるが、それでも男の人にしては少ないと思う。
すらりと高い背は、180cm近くあるだろう。色は白くて、細い体はほとんど肉がついていない。
だけど毎晩筋トレをしているせいで、筋肉はあった。
顔は童顔で、目が大きく、犬を思わせる。
あれ、まだいるんだ。
私は穴の開きかけたコンバースの靴を脱ぎながらそう思った。
キノの足を拭いて家の中に入ると、八広さんがソファにだらりと座って新聞を読んでいた。
寝癖のついた髪を直さずに、眠たそうな目をしている。
台所を覗くと、きちんと皿が洗われていた。
それを見て私は苦笑いをした。
「私が洗ったのに」
「いや、暇だったから」
「仕事、いかなくていいの?」
「今日、日曜……」
「そっか。曜日の感覚がなくなるんだよねぇ」
独り言のように呟くと、手を洗ってパンをトースターに投げ入れた。
しばらくすると、チンッと甲高い音が聞こえたので、パンを出してマーガリンを出した。
八広さんはそれを横目でちらりと見た。
「食べる?」
「いや、いいよ。パンと目玉焼き食べたから」
「そう。でも八枚切りで足りたの?」
「うん。ヨーグルトも用意してくれてただろ。お陰でお腹いっぱいだよ」
八広さんは小食だった。朝だけではなく、夜もあまり食べない。
私よりも食べるが、それでも男の人にしては少ないと思う。
すらりと高い背は、180cm近くあるだろう。色は白くて、細い体はほとんど肉がついていない。
だけど毎晩筋トレをしているせいで、筋肉はあった。
顔は童顔で、目が大きく、犬を思わせる。