青の哀しみ
キノはというと、葬式の最中も吠えていた。

それは逝ってしまった祖母への鎮魂のつもりか、それともただ吠えているだけなのかはわからなかった。

あわただしく過ぎていく時間の中で、ふとキノの散歩に行っていないことに気づき、一週間ぶりにキノをつれて散歩に出た。

キノの大好きな公園に行くと、あたりはもう夕暮れ時だった。

キノは走りたいという顔で私の顔を見た。

キノは口を開けると、笑っているように見える。笑うことが出来るのは人間だけだというが、それでも私はキノが笑っているのだと信じている。

今もじっと私の顔を見て、舌を出して笑っていた。ずっと見ていなかったように思えた顔だった。

「ごめんね」

放っておいたことを謝ると、キノは首をかしげた。

私がかわいいといって喜んだばかりに覚えてしまった仕草だ。

私が話しかけると、首をかしげて聞くのがキノの習慣になっていた。

まん丸の黒い瞳は私を責めることも無く、ただ無邪気だった。

そんなキノの瞳に私はたまらなくなって、ただ走った。

真っ赤に染まった芝生の上をただ走り、キノも同じように夢中で走った。

子どもが驚いたように私たちを見る。

大人も私たちを見る。

私は馬鹿みたいに広くも無い芝生の上をぐるぐると走り、キノも喜んで走った。

そして疲れてその場に座り、キノの頭を撫でた。





 

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