青の哀しみ
帰らなくては、と思った。

しかし、帰ってどうなるのだとも思った。

帰って、荷物の整理をして寝る。

忌引きが終われば会社に行って、今日と同じように何かの部品に何かの部品をひたすら乗せる作業を繰り返し、家に帰ったら新しい家を見つける作業と、荷造りが待っている。

帰る意味が見つからなかった。

帰る必要などどこにもなかった。

「行こうか」

私は歩き出した。

眠っていたキノはあわてて起きだして、私の後を着いてくる。

携帯も、アルバムも、私自身さえもいらない。今私に必要なのはキノだけだ。

「心配要らないよ。キノは私が守るから」

何を言っているか分からないくせに、キノは笑った。

「お前以外のものは全部いらない。お前だけが私の全てだよ。もしそれが嘘になったら、私は私自身を裁いて、切り裂いてみせる」

キノは相変わらず笑いながら、私の顔を見た。
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