甘い誘惑*短編*
当たらずとも遠からず
正しくは、はぶててるわけではなく、悔しいのだ。
私は勇気を振り絞って渡したのに、先輩は私の気持ちに全く気づく様子は見せない。
鈍感なのか、気づいているけど迷惑だから気づかない振りをしているのか。
―――後者だったらさすがに傷つく。
はぶてる振りをしてうつむいた。
その私の顔を両手で挟んで、半ば無理やり上向かされた。
なんですか、と見つめると真剣な顔をした先輩がそこにいた。
思わず呼吸を忘れた私に先輩は言う。
「はぶてんなって、好きだって言ってんの」