甘い誘惑*短編*
息が止まるかと思うほど
心臓が痛いくらい、跳ねた。
呼吸の仕方、忘れたかもしれない
酸欠になる寸前、再び先輩が口を開いた。
「そういう何を言い出すか分からないところ」
笑顔の先輩を前に膨らんだ気持ちは萎み、落胆を隠せない。
忘れていた呼吸の仕方も思い出せた。
彼は知らない
彼の一挙一動で私は簡単に舞い上がるし、逆に簡単に落ち込むことを
「…それはどーも」
そこまで言って、一瞬迷う。
でもいつもこちらが惑わされてばかりだ、たまには私が惑わそう―――どうせ、本気にはされない
「私は先輩のこと、好きですよ」