ゆいちゃんと孤独



「・・・ゆいちゃん。馬鹿は、嫌?」

「嫌。馬鹿、嫌い」

「ぼっちんよりも?」

「・・・・」

ゆいちゃんは黙ってしまいました。

ゆいちゃんは孤独が嫌いです。だけど、馬鹿も嫌いです。
だから、どっちが嫌いかなんて分かりませんでした。
それに、孤独は嫌いだけどぼっちんは嫌いじゃないから、何て言えばいいか分からなかったのです。



「・・・ううん。ぼっちんよりは好き」

だけど、ゆいちゃんは一生懸命考えて、そう答えました。


「そっか・・・じゃあ、それでいいんじゃない?一番嫌いなものじゃないんだから、馬鹿でもいいと思うよ。自分が一番嫌いなものに自分がなってしまうのはいけないけど、そうじゃないのなら、それでいいと思う。無理に背伸びしなくてもいいんだよ」

ありのままでいい。
そのままでいい。
その言葉が、ゆいちゃんの心に刺さりました。
何かが、すっと消えて行く気がしました。


「ゆいちゃん、ゆいちゃんは自分のこと嫌い?」

「ううん、嫌いじゃない」

「じゃあ、馬鹿も嫌いじゃないってことだね」

「え・・・?」

「だって、馬鹿が嫌いなら、馬鹿のゆいちゃんのことも嫌いってことになるもの。だから、ゆいちゃんが自分のことを嫌いじゃないなら、馬鹿だって本当は嫌いじゃないってことになるでしょう?」

「・・・そっか。ゆいちゃん、馬鹿嫌いじゃない」

「うん。じゃあ、馬鹿は止めなくていいね」


< 6 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop