指先からwas唇からlove【再公開】
また、憂鬱な昼休みが始まる。
それでも、お腹は減る。
手提げ袋を開けて、今日、お弁当じゃなかったことを思い出した。
″購買部で済ませて″
そう言ってお母さんにお金を渡されたんだった。
「……一ノ瀬くん、購買部ってもう開いてるんだっけ?」
流し込むようにお弁当を食べ始めていた隣に声をかけると、ビックリしたようにゴホゴホとむせていた。
「……緒先さん、今日パンの日だったの?」
「うん、まだ買ったことなくて」
「昼休みは購買部混むからさ、で一、二年は朝から注文書に書いて係に出しておくんだよ、そしたら取りに行くだけですむ」
「え」
そうだったんだ。知らなかった。
「じゃ、もう買えないの?」
「いや、直販の分は三年生が買い占めてるかもしれないけど、三年は受験で少ないからなんか残ってると思うよ」
「わかった」
何も残ってなかったらそれでもいいや。
「一人で大丈夫?」
「大丈夫だよ」
最近気まずかった一ノ瀬くんが付いていこうとしてくれたけど、気持ちだけ受け取って席を立った。
教室を出る時、海也の席を見たけどいなかった。
あの人、いつも昼休みはどこで何をしてるんだろ?
今まで気にも止めなかった。