指先からwas唇からlove【再公開】
階段を昇る海也の背中を見つける。
「これ、いいよ! そんなにお腹空いてないから」
振り向いた海也は、すでにドーナッツを口に頬張っていて、すぐに言葉は返ってこなくて、
メロンパンを差し出す私の手を、ぐいっと無言で押し戻した。
そして、ゴクンと飲み込むと、
「恥かかせるなよ、さっきの飯島みたいに」
ドーナッツの粉砂糖を口の周りにつけたまま、にやッと笑った。
なんか、白いひげが生えてるみたい。
「……っ」
その顔が可笑しくて、つい声を出して笑ってると、
「おい、笑いすぎ」
瞬間的に周りに誰もいないことを確かめてから
、海也がぎゅッと抱き締めてきた。
数段上にいる海也の心臓部分に私の耳が触れて
、ドクドクと鼓動が伝わってくる。
変だけど、海也、生きてるんだなって……
ちゃんとドキドキしているんだなって思った。