指先からwas唇からlove【再公開】
苛ついたように、唾まで吐いてきた飯島先輩を、海也がムカついた顔をして睨み付けていた。
「アイツ……」
更に三年生たちは、海也をバカにするような言葉を吐き続ける。
「まさか、緒先さんが海也みたいなショボい奴と出来てたなんてショックだわー」
「緒先さーん、そいつまだケツ青い猿やけんね! そのくせヤることは一丁前で女すぐ妊娠させるから気を付けてねー」
笑いながら去っていく飯島先輩たちを、カッ!ときた海也が追おうとした。
「海也くんっ!! ダメッ!」
タックルするように引き留める。
「離せよっ! アイツ、一回ぶん殴りたかったんだよ!」
「逆にヤられるよっ!」
飯島先輩と海也じゃガタイが全然ちがうもの。
「お前、俺のことショボい弱っちい男だと思ってんのかよっ?」
海也がケンカしてるとこも見たことないし、強いとか弱いとか聞いたことないけど、
「暴力振るう人、だいっきらい!」
あっちは進学もしないし内定取り消しもない、怖いもの知らずだから何をするか分からない。
「……緒先……」
また、怪我をしたらどうするの?
「行ったら、もう春なんて待たずに好きじゃなくなる……」
そんな海也を、見たくない。
海也の怪我をした右手を掴んだ。