指先からwas唇からlove【再公開】
施錠された鍵を、海也が加工した針金らしきものでこじ開けた先に、

もちろん、教室なんてない。

高いフェンスで囲まれた屋上だ。



「 ……ここ実験室じゃあないよね?」


ビュン! と、一月の冷たい風が私の声を震え上がらせる。




「何ついてきてんの? バッカじゃね?」



海也は、理科の一式を持ってついてきた私を冷ややかな目で見ていた。



「てっきり実験室に行くのかと」


「俺が皆と机を囲んで実験するタイプに見えるか」




……し、


知らないよ。そんなの。

授業のスタイルに本人のキャラクターなんて関係ないじゃん。

遅刻してきた上に授業出ないとかありえない。


この人、本当にどうしようもないヤンキーなんだ。



「じゃ、実験室はどこ?」


「もう忘れた」



おまけにバカ。




ハッ!


始業ベルが鳴って、気が動転した私が慌てて下へ下ろうとしたら、




「……その制服、いいよな」



突如、後ろから誉められた。



「え」



「紺色のセーラー服……」



ここの学校の女子制服がグレーのボレロ風の制服だから、新鮮に見えるのかもしれない。


「……そ、そう?」



キャラに合ってないのに、海也が良いと言ってくれたセーラーが、強風に煽られて、私の顔をパタパタと叩いている。


さむっ。


ここにいるだけで風邪を引いてしまいそう。


おまけに、
鍵をこじ開けて、こんなヤンキーと一緒に屋上に居るところなんて先生に見られたら、私は初日に問題児のレッテルを貼られてしまう。



とりあえず屋上から下へ降りることに。








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