指先からwas唇からlove【再公開】
前、海也に言われたことをそのまま返す一ノ瀬くんは、
「終わったこと蒸し返すなよ」
子供をなだめるように、海也の頭を触っていた。
それにもムカついたのか海也がその手を叩くように払いのける。
「お前こそ何カッコつけてんだよ? 」
見ててハラハラする私を、女子たちが面白そうに見ているのが腹立った。
「カッコつけてんのはお前じゃん、そんな熱くなるの、海也らしくねぇっての」
「は? これのどこがカッコつけなんだよ?」
いつも気さくに誰とでも楽しそうに話す一ノ瀬くんが、海也に負けじと反撃に出ている。
「今だけじゃないって。この間のマラソン練習だって、いつも走んないくせに緒先さんを目の前にカッコつけたかっただけだろ?」
「……はぁぁ?」
「最後にぶっ倒れる位、体力もないのにさ」
その反撃で、海也の顔を屈辱でいっぱいの色にしてしまっていた。