指先からwas唇からlove【再公開】
海也の顔が一気に不機嫌になった。

「そんなに怒んないで。あのね、サッカー部ってマラソン大会で首位になると、三年でのスタメンが確実になるんだって」


「……」


私が一ノ瀬くんに聞いた部員50名によるレギュラーの座争い。


私との約束でやる気が増すなら、それでもいいんじゃないかと思った。

ただ、それだけだった。






ずっと黙っていた海也が何かを決めたような顔をした。



「一ノ瀬は、俺が授業のサッカーでケガしたときの衝突の相手だったんだ」


「え」




「それから、アイツはずっと俺の顔色をうかがうような目ばっかしやがるんだ、気を使うというか……
あんま本音で喋らなくなった」



憂いを含んだ茶色い瞳に冬の空を映して、
そして、今度は私をしっかりと見つめる。




「マラソン大会、俺が優勝すればいいだけの話だよな?」









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