指先からwas唇からlove【再公開】
「……優勝?」
「そう、俺がそれだけの力があるってわかったら一ノ瀬だってもう負い目はなくなる筈だし、緒先にチョッカイ出させずに済む」
「チョッカイって……」
「一石二鳥じゃん」
ビックリした。
この間、確かにマラソン練習では部活動組に匹敵するくらい速かったけれど……。
「……海也くん、また、倒れちゃわない?」
体力負けしてるもん。
本番の十キロなんて走れないんじゃない?
そんな不安も、
「言ったろ? 俺は持久力はあるんだよ、この前は超久し振りに走ったから目眩がしただけ」
海也のワクワクした表情を見たら、どこかへ吹き飛んだ。
ダルいとか言いながらも、
本当は体を動かすことが好きなんだね。
「……な、俺とも約束してよ」
「え」
再び、海也が私の手を握ってきた。
「俺が優勝したら……欲しいもんあるんだけど」
ドキッとした。
「な、なにを?」
握った私の手を、口元に持っていく仕草に。
海也のセクシーな唇が私の手の甲に触れる。
それだけでゾクゾクと変な気持ちになった。
「緒先の″初めて″」
海也の言葉に、体が一気に熱くなった。