指先からwas唇からlove【再公開】
階段を降りきったところに、
「あ、緒先さん、いたいた!」
私を待ってくれていた人が……。
「い、一ノ瀬……くん」
邦画ヒーローばりの爽やかくん。
「授業始まったのに、理科室来ないから迎えに来た」
そして、またニッコリと白い歯を見せる。
「あ……ありがと」
これが少女漫画なら、″キュン″ とかするんだろうな。
私はひねくれてるのか、そんな音は、胸からはしなかった。
「女って冷たいよな。誰か一人でも緒先さんのこと待っててもいいのに」
実験室は別校舎の一階にあるらしい。
結構な道のりだ。
「皆、自分のことで忙しいんだと思うよ」
「場所教えるだけじゃん! 基本、不親切なんだよ」
「……一ノ瀬くんは、めんどくさくないの?転校生のお世話なんて」
なんのメリットもないことなのに。
それでも、一ノ瀬くんは即答。
「俺、″ぼっちの人″ とかほっとけないタチなんだよね」
何気ない言葉で、チクッと私の心を突き刺した。