指先からwas唇からlove【再公開】
練習したわけでもないのに、体は海風に押されるように軽快に動く。
練習の時にはなかった登り坂も、苦痛ではなった。
きっと、海也の無事に走る姿を見守りたいからだ。
「あの青のジャージ、何者?」
「陸上部かなにかじゃ?」
三年の女子のカタマりを追い越そうとした時だった。
「堂々と抜かしてんじゃないよっ」
誰かに袖を掴まれる。
「え……」
振り向くと、一番顔を合わせたくない深雪先輩とその仲間がいた。
うわ、
なんでこの人も真面目に参加してるの?
この学校のヤンキー、実は真面目か?
「話あるから、歩きなよ」
「あ、今マラソン中なんで話ならあとで……」
「マラソン中は私らも一緒なんだよっ!!」
またビンタされるのが怖くて、仕方なく走るのをやめ、歩調を合わせる。
「あんたさー、やっぱり海也と付き合ってるんだってね」
……やっぱり、そのことか。