指先からwas唇からlove【再公開】
「飯島が、あんたと海也が抱き合ってるとこ見たって!階段でよくそんなことできたよね?」
殆ど歩きの状態で深雪先輩達に囲まれた。
追い越したはずのグループにどんどん抜かれていくのが悔しかった。
「黙ってないで返事しろよっ!」
深雪先輩じゃない一人に、背中に肘鉄食らう。
「……っ」
このひとたち。
海也にケガをさせて、先生に怒られたはずなのに懲りてないのかな?
「あん時、あんた、きっと馬鹿にしてたんだよね?…… 生野に問い詰める私らの事をさ」
「……ちが」
「違わないだろ? 本当は既に出来てたくせにさっ?」
違うのに。
あのときは私も亜美ちゃんのこと疑って羨んでた。
「深雪……ーー卒業式前日に、緒先シメるって言ってたの、別に″今″で良くない?」
仲間の提案に黙って頷く深雪先輩。
″緒先、三年にシメられればいいのに″
あのとき、誰かがそう願っていたことが現実味を帯びてくる。
「何抵抗してんだよっ? 往生際わるっ!」
先生達の姿がないことを確認する三年生に、堤防の間の階段へと連れ込まれてしまった。
「あー、なんか、ヤニ臭いと思ったらー」
しかも、
そこには、
「なんだよ、お前らもサボり?」
隠れて煙草を吸っている飯島達の姿があった。