指先からwas唇からlove【再公開】
ファーストキス
「海也は中学生になったら、リトルシニアと部活動、どっちをやるんだ?」
小学五年生の当時は、良く親やチームの友達に聞かれていたっけ。
「甲子園に行きたいから、リトルに行く」
小学生のリトルリーグで既に硬式野球をしていた俺は、中学生になってもちゃんとした指導者のいるリトルに入る気でいた。
それくらい野球が好きだった。
他のスポーツも大概好きだったけど、野球より楽しいものなんてなかったから、
冬の体育のサッカーなんて適当に球を運んでいた。
だけど、
「一ノ瀬ーー!こっち!」
小学校のサッカー部に入っていた奴等は、授業の一環のプレイも本気で点取りに血眼になっているように見えた。
特に隣のクラスの一ノ瀬は学年一の人気者で、運動神経も成績も良くて、皆からパスを回されてコート中を誰よりも走り回っていた。
その足の速いこと。
あんまり接触したくなかったのに、
一ノ瀬がボールを蹴りながら目の前に突如現れる。
「海也っ、取れっ!」
え?!
同じチームのクラスメートの声に促されるように、一ノ瀬の足元のボールに足を当ててみた。
「…わ…っ」
それが、俺の野球漬けの生活を終わらせる要因となった。
俺の足に引っ掛かった一ノ瀬が、
俺の肩に肩を入れるように倒れてきやがった。