指先からwas唇からlove【再公開】
遅れて出てきた俺と、教室の前ですれ違ったセーラー服の女に思わず見とれてしまった。
真っ白な肌に、赤みの強い唇。
紺色のセーラー服。
小さい時に映画で観た白雪姫みたいだなって……。
あっちも俺を振り反り、目があって、だけど直ぐにそらされてしまった。
「転校生だよ。緒先さん」
一ノ瀬が隣の席らしく、誇らしげに教えてくれた。
「ふぅん、したの名前は?」
女子の下の名前とか、今まで知りたいとか思った事なかったのに、不思議だった。
「緒先遥香さん」
一ノ瀬が、あの子の名前をちょっと照れたように口にした。
その時から、わかってたんだ。
こいつも、転校生のこと気に入ってるって。
「海也くんのクラスに転校生来たでしょ?!
めっちゃキレイなひと!」
同じ女の生野がそう言うくらいだから、きっと緒先は類い稀なタイプなのかもしれない。
「髪も大人みたいでカッコいいし、なんか映画に出てきそうな人だねっ!」
生野の興奮した様子が可笑しかった。
「お前、女だろ? 何 鼻の穴膨らましてしゃべってんだよ? 映画ってなに?」
「えー? いや本当に超超キレーだもん!映画はほら、ホットドッグ?」
「わざと間違えてるだろ?」
生野の言う映画はわかったけど、その女優とも違う。
なんというか、本当に折れそうな感じ。
きっと、抱き締めたら、ポキッとこわれちゃうんだろうなって思うくらい。
……そんな皆の憧れる転校生と、なんの取り柄もない俺が仲良くなれるなんて、全然思ってなかった。