指先からwas唇からlove【再公開】
誰かの一蹴りが顔に当たった。
だけど、痛みなんか感じていられないほど海也のダメージが大きくて、
「わ、なんだよっ?!アブねーだろっ?!」
「危ないのはあんたたちでしょっ!!」
涙と鼻水を垂らしながら海也の上に覆い被さった。
「……なん、こいつ」
「白けさせんじゃねーよ」
グイっと肩を掴まれても、ギュッと海也を抱き締めて離さなかった。
「マジでシラケた」
そう、飯島が放った言葉を最後に、その海岸には波の音だけが響いていた。
「海也……」
動かない体を揺する。
あいつらが去ったからといって、海也が大丈夫になったわけじゃない。
海也の髪に、砂と砂利と血のカタマりがこびりついていた。
そっと、動かなくなった顔に触れる。
指は震えてた。
血だらけの顔は、とても生きているようには見えなかった。