指先からwas唇からlove【再公開】
「おーい」
そこに、複数の足音が近づいてきたのに気付いた私達は、慌てて唇を離した。
「うわ、何だ、海也、血だらけじゃんかっ!」
一ノ瀬くんだった。
「……お前、戻ってきたの?」
てっきり、今ごろゴール地点にいると思っていた優勝候補。
「うん、ほらお前のツレの生野さんが″海也くんがオカシイ″って、心配してたから」
「……あ」
見ると、一ノ瀬くんのあとを追うように、亜美ちゃんも階段を降りてきていた。
「海也くんっ!!やっぱり何かされたんだねっ!!」
悲鳴に近い大声を出して近寄ってきた。
「……生野」
「お、緒先先輩も顔、けがしてる……」
今ごろになって、蹴られた顔が痛くなってきた。
「二人とも、遊園地のお化け屋敷のオバケみたい」
亜美ちゃんの言葉に笑ってしまった。
「ほら、海也つかまれよ」
笑いながら一ノ瀬くんが、その広い背中を海也に差し出す。
「はぁぁ?!、誰が野郎におんぶされるかっての!!」
紅くなった海也の顔が可愛かった。
「お前、肩上げらんねーだろ、照れてないで早くしろよ」
一ノ瀬くんも恥ずかしそうにしていて、
そんな二人がおんぶで階段を昇っていく姿を見ていると、
とても羨ましく思えた。