指先からwas唇からlove【再公開】
「やっぱり? 前から怪しかったもんねー、深雪先輩たちも呼び出したりしてたじゃん」
″海也の本命は生野亜美″
同級生の間でもそんな噂が立ち始めて、
私の心中は尚更穏やかじゃなくなった。
そんなこんなで、新しい学年に少し慣れた頃、
二泊三日の三年生の修学旅行が始まった。
「お小遣い6000円って守る人いるのかな?」
「いないんじゃない? お土産買ったらあっという間やし」
「そーだよねぇ、わたし明日の遊園地でお金たくさん使うつもりだもん」
「フリパじゃん」
「食べ物だよ」
行きのバスは皆、元気があってテンション高め。
隣の席の槇ちゃんは、どうやら好きな人がいるらしくどうやって仲良くなろうかと模索してるようだった。
だけど、なかなかその好きな人を教えてくれない。
「んー?フフ、夜教えてあげる」
「夜まで秘密?」
「そ」
秘密とは言うものの、私は気がついていた。
槇ちゃんの好きな人は一ノ瀬くん。
彼がうちのクラスに遊びに来る度に視線が泳いでたから、直ぐにわかっちゃった。
……秘密なんて、中学生の恋愛には難しい。
「遥香ちゃんも教えてくれなきゃダメだからね!」
「えー?」
本当は、叫んでしまいたい。
私の好きな人は、斜め前、通路側席の末信海也だって。
本当は窓際じゃないと酔うバスも、あえて通路側を選んだのは、ここから海也の肩とサラサラの髪、
時折の何かを持つ彼の手が見えるから。
こうやって盗み見してる私、なんか片思いみたい。