指先からwas唇からlove【再公開】
一ノ瀬くんたちのグループは、四、五人いて、

「ほら、さっき売店でアイス買ってきた。お菓子も」


飲み物が入った袋まで下げて、長居する気満々の様子を見せていた。


「あ、ありがと……」


それはそれで、暴露大会がなくなるので悪くはないけど、ちょっと落ち着かない。
というか、ゆっくり出来ない。


「緒先さんだー、転校して来たときから喋ってみたかったんだよねー! 風呂あがり? 備え付けのシャンプー使ったの?」



一ノ瀬くんの友達が、やけに近寄ってくる。


「うん、そう、みんなと同じ」


「それよりアイス溶ける!早く行こっ、部屋鍵開いてると?」



おまけに一ノ瀬くんに腕を取られて、


「あ、ま」



″待って″


そう言おうとしたら、



チン!


再びエレベーターの扉が開く。



「……あ」



今度こそ、海也だった。






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