指先からwas唇からlove【再公開】
海也の手にはドライヤーが握られていた。
「あ、海也もきた」
だけど、私の他に一ノ瀬くんたちがいるのを確認すると、それをパッと後ろに隠してバツが悪そうにしていた。
「なん、お前も緒先さんとこ遊びに来たの?それとも四組の北川さんとこに遊びに行くの?」
一ノ瀬くんの友達が、私の知らない女子の名前を出した。
「は?いかねーし」
……誰?、北川さんて。
「そう?、さっきもプリクラ仲良く撮ってたじゃん! アイツ、お前のこと一年の時から好きやったらしーぞー」
あー、さっきの女の子か……。
私の髪の毛先から、また滴が落ちてきて首筋を冷たく濡らしていく。
「知らんし、そんなの」
「またまた照れちゃって! アイツ顔はイマイチだけど、二年の生野よりもオッパイでかいぞ、絶対」
最低な事を言ってるのは違う人なのに、
それに反応して顔を赤くする海也を見ていたら、何故か腹立たしくなってきて、
「ほら、マジでアイス溶けるって!
槇ちゃんも待ってるよ!」
私の背中を押す一ノ瀬くんの促しに、逆らうことしなかった。
……冷たい。
髪の毛も、
アイスも、
私の心も。