指先からwas唇からlove【再公開】

海也の手にはドライヤーが握られていた。

「あ、海也もきた」


だけど、私の他に一ノ瀬くんたちがいるのを確認すると、それをパッと後ろに隠してバツが悪そうにしていた。



「なん、お前も緒先さんとこ遊びに来たの?それとも四組の北川さんとこに遊びに行くの?」


一ノ瀬くんの友達が、私の知らない女子の名前を出した。



「は?いかねーし」


……誰?、北川さんて。



「そう?、さっきもプリクラ仲良く撮ってたじゃん! アイツ、お前のこと一年の時から好きやったらしーぞー」


あー、さっきの女の子か……。


私の髪の毛先から、また滴が落ちてきて首筋を冷たく濡らしていく。



「知らんし、そんなの」

「またまた照れちゃって! アイツ顔はイマイチだけど、二年の生野よりもオッパイでかいぞ、絶対」



最低な事を言ってるのは違う人なのに、
それに反応して顔を赤くする海也を見ていたら、何故か腹立たしくなってきて、



「ほら、マジでアイス溶けるって!
槇ちゃんも待ってるよ!」



私の背中を押す一ノ瀬くんの促しに、逆らうことしなかった。




……冷たい。

髪の毛も、


アイスも、


私の心も。







< 166 / 287 >

この作品をシェア

pagetop