指先からwas唇からlove【再公開】
「このドライヤー優れもので長時間使っても髪、傷まないんだ。」


海也はそう言いながら、私の髪に熱風を当てる。
特に根元が乾いてなかったらしく、海也の指に掬われながら風が入り込むととても気持ち良くなった。


……寝そう。

「マイナスイオンが半端なくて……」


海也の声が子守唄みたいになって、知らず知らずのうちに睡魔に頭を揺らされていた。




ヴォン……カチッ。


ドライヤーの音が切れた音で、ハッと目を覚ます。



「……あ、ごめん、ありがと」


「気持ち良さそうに首揺らしてたぞ」

海也、笑ってる。



「本当に気持ち良かったから」

「わかるよ、俺も美容室で寝てしまうから」

「え?美容室? 床屋じゃないの?」

「俺は中学生になったときから美容室だよ」


へぇ、なんか、おしゃれ。
確かに海也の髪型は他の男子よりも長目で都会的な感じがする。


そう、なんか雑誌のモデルみたいな……。



「明日、遊園地だな。ほとんど自由時間だ」

「……うん」



だけど、今みたいに二人きりで乗り物に乗ったりとかは難しいだろうな。


皆に秘密、というか亜美ちゃんに内緒にする交際は、いつまで続くんだろ?




「……どした? なんか元気なくない?」






< 170 / 287 >

この作品をシェア

pagetop