指先からwas唇からlove【再公開】
ビックリして思わず唇を離すと、すぐに海也の切ない瞳と合ってしまう。

「……気持ち悪い?」

そんなんじゃない。


ただ、どうしていいか、わからないだけ。


首を横に振って、離れてしまった海谷の頬に指を伸ばすと、以前はそれに唇を軽く当てるだけだったのに、今日はくすぐったい感触も引き連れていたから、思わず手を引っ込めた。



「気持ち悪い?」



同じ質問を繰り返されて、そうじゃないと、目で訴える。


「……遥香……」



下の名前を初めて呼ばれた。

彼が女の子を名字以外で話しかけるところは見たことがない。

それだけで、海也の特別な存在になったような気がした。




「……それがいい……」



今だけじゃなくて、ずっと、そうしてほしい。



海也が試すように、自分の指を私の口元に触れさせる。


ケガをした時の傷が消えずに残っている指。




私は、おそるおそる、震える唇でそれにキスをした。






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