指先からwas唇からlove【再公開】
海也が最後に出ていくフリをしながら、私の方を覗いてきた。
「長いことゴメンな」
海也がお姫様だっこをして押し入れからおろしてくれた。
ほんの一瞬だったけど、また軽く唇を重ねてきた。
二人、入り口に戻ると、
「さみー!夜は廊下冷えるー!」
「無理無理」
直ぐに部屋の男子がガヤガヤと戻ってきてしまった。
「ヤバッ!」
海也は、私を抱き抱えるようにして布団に潜り込み、何事もなかったかのように頭を少しだけ出して寝入った真似をしていた。
えー、これ、大丈夫?
先程よりも息を潜めて、なるべく体を平らにし表から分からないように海也の体に沿って密着。
「なんだー、海也、もー寝てるのか?」
「こいつ、前、緒先と噂あったくせに冷たい奴」
何を言われても、寝たフリを続ける海也の胸の鼓動が激しいことに気付いた。
布団内に充満する海也の匂いが心地いい。
ここなら、何時間でもいられる。
周りの雑談も段々と聞こえなくなった頃、少しウトウトしてきて、このまま寝そうだった。
「もう、いいぞ」