指先からwas唇からlove【再公開】
「……お菓子たくさん買ってるね」
海也の手には、洋菓子も和菓子も乗ってた。
「あー、殆ど俺のオヤツ。母さんからは漬物とか買って来てって言われてる」
「あっちの陳列にあったよ」
「あー……マジだ」
直ぐに行こうとする海也の制服の裾をそっと掴む。
「ん?」
本当は、遊園地で、一緒に写真かプリクラ撮りたかった。
残りの時間でそのチャンスはあるかな?
「あ、いや、亜美ちゃんにお土産買ったのかなぁって!」
「あ、そーだ。あいつにも買わなきゃなぁ。
緒先は自分には買わないの?」
皆の手前、呼び方が名字になってるのも寂しい。
「うん、買おうとは思ってるけど……」
特に欲しいものはないんだよね。
「あ。精算したらもうバスに戻る?」
「ううん、まだ……」
「そんなら、ちょ、ここで、待ってて」
「?……うん」
人だかりのなかで、一際背が高く目立つ海也はどこにいてもわかっちゃう。
うちの学校の生徒じゃない女の子も、彼に目を奪われているのが分かった。
こんなところでも罪な人……。
海也は精算を済ませると、店の入り口のベンチに座る私のところへやって来た。
「はい」
「え?」
私の膝の上に小さな紙袋。
「記念にやるよ」
「なに?」
貰って早速開けてみる。
「……これ、今、買ったの?」
青い石の付いたストラップだった。
ターコイズ?
「そう。旅のお守りとか、魔除けとか、邪悪なものを寄せ付けないとか書いてあった」
たった数分でこれをチョイスしてきて、買ってきてくれたの?
「あ、ありがと」
凄い嬉しい。
ぎゅっと掴んで、早速スマホに結びつけた。
「じゃあな、一ノ瀬がこっちめっちゃ見てるからもう行くわ」
そう言うと、集合場所のゲートに早歩きで向かう海也。
その背中は、凄く照れ臭そう。
写真は結局撮れなかったけど、それでも幸せたった。