指先からwas唇からlove【再公開】
「陸上部でもないのに、凄いね……」
「うん、三年間、チンタラしてたのにな」
″緒先先輩と先に大人にならないで″
海也にそんなラインを送っていた亜美ちゃん。
「……出るの? そしたら、毎日練習しなきゃいけないんじゃない?」
「そうなんだよな。出るとなったら猛練習になるよ」
「……」
亜美ちゃん、違うよ。
海也は一人で大人になろうとしてる。
置いてけぼりは、私もなんだよ。
「迷ってるんだ、やってみたい気もするけど、俺、あまちゃんだから一人じゃ決められない」
「海也はあまちゃんじゃないよ」
そんなの、私の方が……。
「遥香は、どうしたらいいと思う?」
それなのに、薄茶の潤んだ瞳で私に問いかけてくる。
答えは一つしかないのに、
「海也のチャンスだから、やってほしいよ」
本音は、ちょっとだけ違った。