指先からwas唇からlove【再公開】
二人の姿を発見して、帰りづらくなった私は、下駄箱の陰に隠れて時間が経つのを待っていた。
「……なんで? 昨日も一緒に帰れなかったのに」
「生野と毎日帰る義務もねぇし、それに俺、今中体連に向けて走ってるから」
海也は、袖を掴んでいた亜美ちゃんの手を振り払っている。
「……じゃ、朝だけはせめて……」
「朝練!」
そして、とうとう、
海也らしくない冷たい態度でグラウンドの方へ行ってしまっていた。
海也は怒ってるんだ。
写真の事。
私もあの事は許せないけど、それでも少し可哀想になってきた。
暫く亜美ちゃんとは顔合わせづらいかも。
それなのに、
♪♪♪rirrirrirrirrir
こんなときに限ってスマホに電話が……。
ヤバイ、亜美ちゃんに気づかれてしまう。
お母さんからの電話に慌てて出る。
「……もしもし ……あ……」
電話を取る私の頭の前に、フッと現れた亜美ちゃんの顔。
心臓、止まるかと思った。
「……海也くんにあしらわれるうちの事見て、笑ってたんですか?」
涙をためた瞳で、私を鋭く見つめる亜美ちゃんの顔は、
このときは、大人に見えた。
「″もしもし? 遥香? 帰りに郵便局に寄って切手買ってきてくれない?″」
その鋭い顔を見ていたら、
スマホから響くお母さんの声なんて、全く耳に入ってなかった。