指先からwas唇からlove【再公開】

「緒先先輩なんて、転校してこなきゃ良かったのに!」


亜美ちゃんの大きな瞳から溢れ出す涙は、止まらない。



「……」


そんな彼女に何を言っていいかわからない。


亜美ちゃんは、そのまま一人走って帰って行ってしまった。





「海也が陸上部の練習に出とる!」
「マジ? 陸上部に入ったの?」
「今さら?」
「走るのに速すぎて、中体連に駆り出されたって!」
「ヤンキーの面影ないわー」
「でも中体連って、髪染めてたらアウトだよね?」


重たい足取りでグラウンドの前を通ると、海也を見守る女の子たちの群れを見かけた。


「かいやーーーっ」


一人の女子が大きく手を振って応援している。


……北川さんだ。



海也はシカトしてたけど、みんな、彼の走る姿を見るだけでとても楽しそうだった。




彼女いるとかいないとか、もう関係ないんだね。



女子の群れから離れて海也を見つめても、勿論、海也は私の方も見ない。


気付いてもいない。






……″彼女″ って、いったいなんなんだろう?







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