指先からwas唇からlove【再公開】

「82円切手ください」

お母さんに頼まれた切手を買いに郵便局へ。

そこにも手描きの中体連のポスターが貼られていた。

巧いなあ。




四月に入って直ぐに美術の時間に描かされたな……。

これ描いてる時は、まさか海也が出るなんて思いもしなかったけど……。



今はポスターの選手が海也に見えてくるよ。


郵便局を出て近くのコンビニのまえを通ると、




「末信海也って中体連出るらしかなー」




誰かが海也の話をしてた。

思わず声の方を振り返る。


……違う学校の制服。



一つ上の飯島達を思い出してしまうような悪そうな子たちだった。




「あいつ、最近めっきり遊ばんくなった」

「中体連のせいじゃ?」

「違う、女おるから」




そんな会話が聞こえてきて、自分の他にも淋しい思いをしてる人がいるんだなって思った。


そして、また、亜美ちゃんの泣き顔を思い出して胸がチクリとする。



「アイツの女って誰だっけ?」

「生野っていう、ちっこい奴じゃ?」





だけど、やっぱり、自分のほうが可哀想に思えてた。


私達、ちゃんと付き合ってるのに、

他人から分からないほど、二人の時間が少ない。



スマホに付けたストラップを握りしめ、
もう、亜美ちゃんには同情しないって思った。



















< 195 / 287 >

この作品をシェア

pagetop