指先からwas唇からlove【再公開】
「もう昼間暑いから、早く夏服にすればいいのにねぇ」
中間服のグレーのベスト。
これ、ダサくて本当に恥ずかしい。
男子は殆ど着用せずにシャツ一枚でいる。
「女子は絶対ベスト着用なんだよ」
ベストを脱ごうとした私を槇ちゃんが止める。
「女子だけ?」
「そ、女子はシャツから下着が透けたら男が欲情するからだって」
考えすぎでしょ?いくらなんでも。
だけど目立ちたくない私は大人しく脱ぐのを我慢する。
「だけど、北川さんだけは違うんだよ。
わざと脱いでるんだよ、海也の前だけ」
「え」
槇ちゃんの耳打ちに驚いて、そしてその視線の先を追いかけると、
「海也いる?」
最近、よくうちのクラスに遊びにくる北川さんが確かにベストを脱いで入り口にいた。
しかも……。
「下着付けてるどころか、ノーブラなんだよ」
カァと、私が赤くなってしまうほど大きな胸とその先端があらわになっている。
あれ、わざとなの?
「海也の前だけってのが徹底してるよね。自分の教室に戻るとベストちゃんと着るんだよ」
槇ちゃん以外の女子も男子も、好奇な視線を北川さんに送り続ける。
海也、そっち見ないで。
「またお前かよ」
なのに、海也は呼ばれてちゃんと向かってる。
視線を胸にやらないように必死に顔だけを見てるという感じだった。
それが余計に意識してるみたいで……。
「修学旅行の時、こっそり撮った海也の写真あげるー」
「こっそりじゃなかったじゃん」
それに、
私といるよりも、自然に多く北川さんと話してる時間が長いような気がした。
ますます、私ってなんなんだろうって思えてしまう。
「海也の彼女って緒先じゃなかったっけ?」
「違うんじゃない?」
昔みたいに、
心がだんだん縮こまっていくーー