指先からwas唇からlove【再公開】
【今日、練習休みだから会おっか】
久しぶりに海也から誘いのラインがきた。
私も、もう亜美ちゃんのことは気にしないと決めた。
【うん、どこで待ってればいい?】
放課後。
部室に練習着を置きっぱなしだからと、
その前で待つように言われた私。
コーヒー牛乳を買って、
陸上部の部室を探し、その日陰で海也が出てくるのをワクワクして待っていた。
だけど、
「海也ここに入っていくの見たよ」
「今日こそ一緒に帰る!」
こんな日まで海也を追いかけ回す北川さんたちの姿を見て、それはあっさりと萎えていく。
え?
……″一緒に帰る″ って言った?
「北川、積極的すぎ! 海也、彼女と約束してんじゃないの?」
「彼女って誰だっけ?」
「あはは、転校してきた緒先さん!」
「あー、あのお化けみたいにうすーい人ねー」
部室の陰に潜む私のことなんて気づいてないんだろうけど……でも、すごい言われよう……。
私、そんな風に思われてたんだ。
ショック……。
「でも、海也は彼女を好きなんでしょ? 2年のときから噂あったじゃん!」
他の女の子がそう言っても北川さんは、
「あれは、転校したばっかで目立ってたから騒がれてただけ! 最近の海也は、ちゃんと私のこと見てくれてるよー」
自信ありげに自分の胸を押さえていた。
「海也も男だから、こんだけ強調してれば触りたそうな目して私のこと見てるんだよ」
「それ、おっぱいしか見てないじゃん」
おまけに、海也をエロいみたいな言い方してる。
「そーかもしんないけど、でも、脈はあるよ!ほら!これ、海也にもらったし!」
そして、北川さんが自慢気にポケットから取り出したものは、
「あ、それ、海也が鞄につけてたストラップ?」
「そう! 遊園地で買ったやつね!」
「うそ?貰ったの?」
「うん、あっさり」
私とお揃いのデザインのパワーストーンのついたストラップだった。