指先からwas唇からlove【再公開】
でも、やっぱり他人の気持ちを考えないでいたのは亜美ちゃんでもなく私で……。
こうやって一ノ瀬くんと一緒に歩くだけでも、
彼を好きな子からしたら、とても傷つくことなのに。
翌日。
まず、槇ちゃんに責められた。
「一ノ瀬くんが、ラインで緒先さんと帰ったって送ってきたよ」
登校してきたばかりの私に、ラインを見せる槇ちゃん。
「……たまたま塾に行っただけよ」
「遥香ちゃんはそうかもしれんね。けど、一ノ瀬くんのラインスタンプ、めっちゃ嬉しそうにしてるやつだよ。こんなの初めて送ってきた
……」
「……」
見せてもらったのは、ハートを背中にくっつけたサッカー少年のスタンプ。
どうともとれるけど。
……一ノ瀬くん、槇ちゃんの気持ちには気づいてなかったのかな?
何も返せない私に、ふいっと背を見せて立ち去る槇ちゃん。
その後ろ姿は怒っていた。
そして。
「緒先」
ここにも怒った顔の人が……。
海也が不機嫌な態度で私の腕を取った。
「ちょっと来て」
もうすぐHRが始まるというのに、私の手を離さずにぐいぐいと引っ張る。
「痛いよ、なに?」
久しぶりに上がるつもりだったのか、屋上の南京錠が針金で開かずに苛立つ海也。
「なに、じゃねーよ。なんでラインシカトすんだよ?」