指先からwas唇からlove【再公開】
塾に行って、勉強に打ち込んでいたら、人間関係や学校のこと忘れられるかもしれない。


……単純にそう思っていたんだけど、




「北川さんも……いるの?」

緊張しつつ、一ノ瀬くんたちと入った教室に、今一番会いたくない姿があって愕然としてしまった。


「あ、女子も結構いるよ!うちの学校の子」


一ノ瀬くんは北川さんの海也への積極的なアプローチは知らないのか、興味ないのかあまり気に止めることもなく私を北川さんの席の近くに案内した。

……やだ。


変わりたい。



北川さんを囲む女子や、よく知らない男子の視線が痛かった。

また転校生になった気分。



早く講義始まらないかな?

そう思っていたら、



「この子、だれ?」


北川さんの近くの席の男子が私を指で指していた。


きっと、他の中学の子だ。


一ノ瀬くんが、

「緒先さん、まだこっちに来て浅いんだよ」

と返事をしてくれていたけど、



「あの男泣かせの緒先?」


聞き捨てならない返しをしてきた。


「なに、″男泣かせ″のって?」


一ノ瀬くんも渡辺くんも、その男子に食いついている。



「だって、北川が良く文句たれてる緒方さんでしょ?
飯島はじめ、渡辺も一ノ瀬も海也までも告白してことごとくフラれたっていう」


「はぁぁ??」



一ノ瀬くんも渡辺くんも顔を真っ赤にして驚いてた。


合ってるのは飯島だけ。


海也と一ノ瀬くんは微妙に違うし、北川さんなんてこと言いふらしてんの?


「違うって、海也は違うのー!海也は誰にも堕ちてないんだってー」


北川さんは、笑いながらその男子の口を手で封じてた。



「え、違うの? ヤり×ンの緒先じゃねーの?」


エスカレートするその男子のいじりに、私の顔は湯気がでるんじゃないかと思うくらい熱くなっていた。



入塾初日にそんなこと言われたら、来づらいじゃない。




また前髪で顔を隠す。




一ノ瀬くんが、そんな私を気の毒そうに見ていた。


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