指先からwas唇からlove【再公開】
「緒先遥香さん、ちょっと残って貰っていいですか?」
初日の数学と英語の講習を終えた私に、塾長が声をかけてきた。
「はい」
皆が帰っていく中、先生達のいる部屋へ入ると、早速英検のことを確認された。
「まだ今日が初日だし、緒先さんは検定の講義始まってないけど、団体の申し込みが明日までなんで人数に入れておいていい?」
「はい……」
塾の案内書にこの塾で受験できると書いてあった。
申し込むとなると、本気でやらなきゃいけない。
「さっきの授業で思ったけど、緒先さん英会話とかも習うといいかもね。とてもキレイな発音とヒヤリング力が高かったから」
「あ、……ありがとうございます」
珍しく誉められた。……嬉しい。
そして、また思い出しちゃった。
二年の時に、海也が言ってくれたこと。
″緒先さん、英語、好きなんじゃない?″
好きなこと、
誰よりも早く、海也が気が付いてくれたんだよ。
だから、今素直になれない私の気持ちにも気が付いて欲しい……。
自分からは出来ないのに、
海也からの連絡を待っている私がいた。