指先からwas唇からlove【再公開】

もしかしたら、と思っていたけど。やっぱり今日も北川さんは海也を待っていた。
彼女の鞄に付けられたストラップが目につく。


……おまけに、


「おい、お前、傘も差さないで突っ立ってたわけ?」


「傘持ってきてないもん、海也入れて!」


北川さんは、夏服になった半袖の制服が案の定びしょ濡れで、透け透けだった。

下着なんて着けていない。

そこまでする?


海也の目のやり場に困った顔。


早く、着替えて私のラインに気が付いて。


そう願っていたら、少し離れたところにいる私に、海也が気付いた。


「……、」


何か言いたげな海也だったけど、



「オーイ、一年、球拾い終わったらさっさと着替えろよー!!」


ドヤドヤと部室に入っていくサッカー部の群れが目の前を通って、その顔が見えなくなった。




「緒先さん! 丁度良かった!塾まで傘入れて!」



よりによって、一ノ瀬くんに話しかけられてしまう。



サッカー部の群れが部室に入りきったとき、
もうそこには海也の姿はなかった。






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