指先からwas唇からlove【再公開】
その代わりに北川さんが私と一ノ瀬くんに気が付いた。
「二人、待ち合わせてんの? 仲いいねー」
違うと分かってるのにそんな言い方をする。
「たまたまだよ、あれ? 緒先さん、もしかして誰か待ってた?」
一ノ瀬くんの遅い気付きに私は赤面し、北川さんは勝ち誇ったような目をする。
「海也は、私と相合い傘して帰るって言ってるけど?」
そう、この人はただの一回も私のこと″海也の彼女″ だなんて思ってないんだ。
悔しくて、胸なのか、手なのか分からないけど凄い震えて、
「一ノ瀬くん。傘、使っていいよ、私先に行くから」
傘を強引に渡して、さっさと塾に向かった。
……こんなのばっかり。
ただ、雨が酷くなったおかけで、
涙で濡れた顔は、塾に着いても気が付かれることはなかった。