指先からwas唇からlove【再公開】
「うわ、びしょ濡れじゃん、緒先さん!」
渡辺くんがビックリしてる。
髪型のせいもあるけど、雨に打たれてお化けみたいになった私。
6月とはいえ、塾のエアコンが寒いくらいだった。
「緒先さん、マジで風邪ひくよ。 もー、びっくりしたよ傘置いて先に行くからさ」
後を走って追ってきた一ノ瀬くんがタオルを差し出してくれた。
「……」
「あ……部で使ったから臭いかもしんないけど」
「ありがと……」
首を横に振って使わせて貰うことにする。
「やっぱり、ラブラブね」
そこに遅れて北川さんが入ってきた。
海也の傘でここまで送ってもらったんだろうか?
だいぶ乾いたにしても、彼女の下着無しの透け具合は強烈で、
「北川、それ反則。勉強どごろじゃねぇつーの」
この前、私をいじっていた他校の男子がからかっていた。
「ジロジロ見ないでよ、見ていいのは一人だけなんだから」
北川さんは、鞄からタオルを取り出してそれを肩から胸にかけていた。
徹底して海也だけの彼女。
敵わないと思った。
講習始まる前に、海也からラインがきてた。
【ライン送る相手、間違ってない?】
悲しい返事。
誤解なのか、それともイヤミなのか。
どっちにしても、それに返すことは出来なかった。