指先からwas唇からlove【再公開】
壊れた心

「これ、もう、持ってる意味ないから」


修学旅行で買ったストラップを突き返されて、本当にショックだった。


俺が北川に、あの遥香とのお揃いのストラップをやったのは、……もう使えないと思ったからだ。




鞄に付けていたそれを、ずっと欲しがっていた北川。


「いーじゃん、何千円もするやつじゃないんでしょ? それに好きな人の持ち物ってなんでも欲しいの!」


ことあるごとに、手を伸ばしては触れてきた。

俺は俺で特別な意味があったし、触れさせたくなくて鞄を振って、その手から逃れてたんだけど……。




「きゃっ!」


そうしたことによって、石の一つが外れて飛んで、わざとらしく開けた北川のシャツの胸元にそれが入ってしまった。


よりによって、そこかよ。


「あーん、中に入っちゃった!谷間に挟まってる!取って!取ってー」



取るか。


シカトしてたら、北川は自分で石を取って、それを元の金具の部分に押し込もうとしてた。


止めてくれ。


マジで気持ち悪いから。



なので、つい、




「もう、これ要らねーから!」


鞄から外して、露出狂のワガママ女にくれてやった。


お願いだから、もう俺につきまとわないでくれ。





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