指先からwas唇からlove【再公開】
生野が切ってくれた桃を食べていた俺。
甘い汁で蒸せそうになった。
「……あ、そー」
「始めは、うちと付き合ってるって皆噂してたんだけどねー、修学旅行のあとから緒先先輩が怪しいってなって、そして、あのボンキュッボンの先輩が愛人って言われ始めてー」
ボンキュッボン……北川のことだろう。
しかも、
「……愛人て」
下級生、すげーこと言うんだな。
「けど、今は緒先先輩が海也くんを裏切ったって皆言ってるよ」
「……」
俺は、生野に遥香のこと話してなかったから、
なんて返していいかわからなかった。
なので、そんなに好きでもないのに、ひたすら桃を食べていた。
「海也くんの心を占めてる人は、いったい誰?」
そんな分かりきった質問にも、俺は答えられない。
「あ……れ? この写真……」
沈黙を破るように、生野が俺の机の上に置いていたアレに気がついてしまった。
「修学旅行の写真……買ったの?」
展示されていた写真館撮影のスナップ写真……。
あの雨の日の傘の写真も俺は、コッソリ購入していた。