指先からwas唇からlove【再公開】
言い過ぎた……、そう思った時には遅かった。
生野は、大きな瞳に涙をためて今にも泣きそうな顔をしていた。
「やっぱり、海也くんもうちのことオカシイって思ってるんだ……?」
「……」
ヤバイ。言っちゃいけないこと言った。
先天性の障害で、思ったことを和らげずに発してしまう生野が、それが原因で虐められていたことすっかり忘れてた。
でも、もうそろそろ卒業したかった。
「海也くんだけは、うちのことわかってくれると思ったのに」
「……」
「守ってくれると思ったのに」
生野の″保護者″みたいな立場から、脱したかった。
「海也くんのバカっーーー!!!」
そう叫ぶと、生野は壊れたように暴れだした。
俺の本棚の物を乱雑に引っ張り出して投げまくる。
「おいっ!! やめろって?!」
飾っていたフィギュアも、リトル時代のトロフィーも全部落としまくる。
初めて見せたその豹変ぶりの態度に俺は、恐怖さえ感じ始めていた。
「緒先先輩が転校してしてから海也くん変わった!!」
そして、生野は、俺が買った修学旅行のあの写真を手に取って、また引き裂こうとしている。
「やめろって!!」
生野を押し倒すようにして、その狂気を閉じ込めた。