指先からwas唇からlove【再公開】
「あー……じゃ、はい」
まだ残っていた絆創膏をポケットから出して渡すと、
「貼って」
と、意外に甘えてくるので、ちょっとおかしかった。
「海也くんは自分で貼りなよー、男なんだからっ」
「自分で貼ったらヨレるんだよ」
「ならうちが貼ってやる」
「ふざけんな、お前の手、泥だらけやないか」
「誰のせいでそうなったと思ってんのよ?」
「生野のゼロに近い運動神経、制御神経」
「違うでしょ?! 海也くんがブレーキ直してないからじゃん!」
貼ってあげても良かったけど、何やら楽しげな痴話喧嘩が始まったので、
さりげなく立ち去ろうとしたら、
「あっ、緒先さーん!!
ライン待ってますねーーー♪」
生野亜美が、絆創膏を貼った手をブンブン振って声をかけてきた。
「うん」
聞こえた、かな。
あの子みたいに、大きな声は出なかった。
とても、可愛い女の子。
海也くんのことが、好きなのかな?